破産手続における事業譲渡

今週末は、破産手続における事業譲渡を勉強していました。

読んだ文献は以下の通りです。

工藤敏隆 事業譲渡による事業再生―「計画外」から「再建型手続外へ」(論究ジュリストNo.35 P123~)
鈴木学 事業譲渡を先行させた破産手続における留意点(事業再生と債権管理No.161 P82~)
河本茂行 新型コロナウイルス感染症下における中小企業の「再生型破産」手続(事業再生と債権管理No.171 P130~)

アウトラインはおおむねつかめましたが、気になるのは、債務の承継が債権者平等を害し許されないという認識が共有されているにもかかわらず、実際には債務の承継が大半である点です。

おそらく全体的な価値に増加に寄与していることから債権者平等は害されないという理解なのでしょうが、全体的な価値の増加で債権者間の不公平をどこまで正当化することができるのかははっきりしないように思います。

また、ここでいう債権者平等を害するという点について、否認ができるかという問題は否認の根拠条文にも関係するように思います。

否認の根拠条文の160条説を前提にするとすれば、160条では否認できないが、問題のある債務の承継がなされているというケースにおいて、否認を認めるべきかという問題が生じるのではないでしょうか(160条説からはある種の割り切りが必要になるのではないでしょうか)。

ただ、結論としては債務の承継は認めざるを得ないケースが大半であると思われます。

そうすると、理屈はともかく、全体的な価値の増加に寄与しており、かつ、債権者平等の著しい潜脱と評価されるような承継がなされない限り、実務的にはあまり大きな問題にならないのでしょう。