取引基本契約における不合格品の取扱い

取引基本契約では、検収条項と契約不適合責任条項の両方を置いている契約書がほとんどだと思います。

不合格品の取扱いについて、両者は似たような規律になることが多いのですが、私は今まで以下の通りに理解していました。

検収条項:完全履行請求権に関する条項(債務の本旨に従った履行がないので、正しく履行せよと請求する条項)

契約不適合責任条項:契約不適合責任を定めた条項

 

ところが、関係者から検収条項の不合格品の取扱いは契約不適合責任であるとのコメントが寄せられました。

 手元にある阿部・井窪・片山法律事務所編「契約書作成の実務と書式」(有斐閣、2014年)を参照すると、以下の通り記載されています(旧版ですが…)。

検査に不合格となった商品があった場合や 数量の過不足があった場合に,法律上の,あるいは契約で修正したルールに基づく通知義務を果たした買主としては,まず完全履行請求として代品や追加品の納品の請求について規定するのが通常である。これに加えて,必要に応じ,損害賠償請求や解除権,履行の際の費用負担の定め等を検討することになる(阿部・井窪・片山法律事務所編「契約書作成の実務と書式」(有斐閣、2014年)34P)。

これに加えて、一般的に検収完了時を危険の移転時期とするのが通常であるところ、民法第567条第1項に照らせば、引渡し=検収完了時と理解せざるを得ず、それゆえ、引渡しがなされたことを前提とする契約不適合責任は不合格判定時(検収前)には適用されないと解されます。

 もちろん、危険負担における引渡しと契約不適合における引渡しが全く同一である必要はないと理解すれば、このような解釈は成り立たないのでしょうが、全体を整合的に解釈すれば、この理解しかとりえないような気がします。

自信をもってコメントされてしまうと、本当に自分が正しいのか不安になりますね。