弁護士はこう表現する 裁判官はここを見る 起案添削教室

 

 1 購入動機

何か得るものがあるかと思って購入。

 

2 感想

私の年次が上がってきたこともあり、残念ながらあまり得るものはありませんでした。

実感としては弁護士1年目~3年目向けの書籍という印象でした。

書籍の内容については、実例を付して説明するなどして、読者に、より分かりやすく理解させようという配慮が行き届いており、その意味で「起案」のお手本のように感じました。

 

ただし、個人的な印象として、弁護士の起案のわかりにくさの根本は、起案の位置づけにあるのではないかと思います。

すなわち、弁護士を事業としてとらえた場合、ある程度、善解や釈明してくれる裁判手続にコストをかけたとしても、裁判官を助けるだけであり(裁判官が弁護士によりかかり始めることすらありうる)、主張書面(弁護士の作文)によって、結論自体が動くことは多くはないのですから、ほかの部分にコストをかけた方が効率的です。

そのため、起案に十分な時間をかけて100点を目指すよりも、ほどほどの時間内に70点を目指すということになるのではないでしょうか。

これに対し、裁判官は手続の円滑な進行(つまりは、自分の仕事のやりやすさ)に、弁護士の起案の良しあしが決定的に重要です。

このように起案の位置づけに相違があるから、裁判官が裁判官室で愚痴や文句を言つづけ、弁護士は我関せずという状態が続いているのではないでしょうか。

プロフェッションの在り方としてどうなのかという問題はありますが、たぶん、この問題は現在の裁判制度が続く限り、ずっと残り続けると思いますね。