公開の法廷において陳述された準備書面は公表されているか

考えるきっかけは以下のツイートでした。

 

準備書面は、個性の発露が弱いとしても、場合によっては著作物に該当しうるとは思います。

じゃあ公表権侵害が成立するかと言われれば、40条1項*1により利用が許されるのに、公表権侵害が成立するのはバランスが悪いと感じました。

そこで、公表権侵害を否定するロジックを考えて思い付いたのが、準備書面が未公表著作物に該当せず、公表権侵害が問題にならないというロジックです(18条1項)。

まず、著作権法では、①発行、②権利者又はその許諾等を得た者による上演、演奏、上映、公衆送信、口述又は展示の方法による公衆への提示を行うと公表されたことになります(4条1項)。

そして、発行とは、公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が権利者又は許諾等を得たものにより、作成され、頒布された場合をいうとされています(3条1項)。

ここで問題になるとすれば、①発行、②口述、③展示のいずれかなのではないかと思います。

まず、発行について検討すると、これはなかなか難しいように思います。

すなわち、準備書面の交付対象は、裁判所と相手方当事者であり、裁判所に交付することにより、謄写の対象になり、当事者及び利害関係人に供されることになります。

しかしながら、これが公衆の要求を満たすかといわれれば、それに足りないと評価せざるを得ないように思います。。

次に、口述についても、民事訴訟法上の陳述と著作権法の口述は異なる概念であり、実務では「陳述します」としか言わない以上、口述したとはいえないと思います。

最後に、展示については認める余地があるのではないかと思います。

すなわち、準備書面は原則として閲覧の対象になるところ、裁判所に準備書面を提出することにより、裁判所を手足として*2、公衆に広く展示していると評価することが可能なように思います。

 

公表権自体はマイナーな権利ですが、こう考えてみるとなかなか面白いなと感じました。

考える素材を提供してくれた藤吉先生には感謝です。

*1:40条1項との関係では、準備書面が公開の陳述に該当するというよりは、公開の法廷における陳述=準備書面であるため、公開の陳述の複製物を利用していると位置づけざるを得ないと思われます。

*2:閲覧させる主体は裁判所であるため、準備書面の作成者が展示していないというロジックも成り立ちえます。