感染症 広がり方と防ぎ方 増補版
1 動機
昨今の状況にかんがみて、ざっと状況を把握しておきたかったため。
2 感想
ニュース等でいわれている内容とほぼ同じ内容が記載されており、この1年間で公衆衛生の知識が広く普及したのだなと実感させられました。
それでも、コレラ、ノロウイルス等の感染経路から、水洗トイレや塩素消毒が果たしている役割の重要性を知れたので、読むかいはあったと思います。
ピルの導入に対して、利害関係を有する医師が反対意見を述べることができないという記述には非常に政治的だなという印象を抱きました。公衆衛生的な価値観からは誤った政策であっても、国民に多様な選択肢(快楽に伴うリスクを選択することを許容する)を与えるという価値観からすれば正しい政策なのですから、政治とは何を重視するのかという判断を行うことなのでしょう。
ところで、本書は2006年に初版が発売され、2011年に3版まで版を重ねたのですが、増補版は2020年4月に初版が発売され、同年5月には4版まで増刷されています。
著者も新型コロナウイルスの情報が少ない中で、出版社に依頼されて加筆したと思われるため、増補部分は20Pだけであり、大したことは書いてありません。
それでもこれだけのスピードで売れたのは、市場のニーズに応じて、速やかに必要な本を出すという中公新書の判断が正しかったからなのでしょうね。
サラ金の歴史
1 購入動機
修習時代にお世話になった先生がクレサラ対協にかかわっており、活動についてはいろいろと伺っていました。
修習では宇都宮先生の著書をお貸しいただき、世間知らずな自分が触れたことがない世界があること、クレサラ被害の実態等を教えてもらいました。
ただ、被害はよく理解できたのですが、なぜここまでサラ金が栄華を極めたのかということを知らなかったため、それを補完するために読んでみました。
2 感想
中立的な記載を意識していたと著者がいうこともあり、その動機を満たす内容でした。
多数の文献に基づいて、資金調達、審査手法、顧客のニーズなど様々な角度から、サラ金の発展と衰退を分析していた点が素晴らしく、読み物としてとても面白かったです。
総量規制等によってサラ金が衰退した後は、特殊詐欺への移行、個人間融資の復権が生じているとのことですが、やはりニーズがある限り、それを満たす経済的合理性を有するシステムが作られるのであり、人間の欲望は本当に果てがないなと思います。
スタンフォード&ノースウェスタン大学教授の交渉戦略教室
スタンフォード&ノースウエスタン大学教授の交渉戦略教室 あなたが望む以上の成果が得られる!
- 作者:マーガレット.アン・ニール,トーマス.ゼット・リース
- 発売日: 2017/06/16
- メディア: 単行本
1 購入動機
交渉がうまくなりたくて購入。
2 感想
扱っている交渉の多くはゼロサムなので、そこまで役に立つという感じではなかったが、準備が大切という指摘には納得。
洋書の翻訳だからか、なかなか読み進めにくく、読み終わるまでにかなり時間がかかりました。なぜ読みにくいのか考えていましたが、見出しと内容が整合していなかったり、見出しの中で内容がうまく整理されていなかったりして、書きたいことを書いているという印象が強かったからのように思います。
余り身についた感じはしないので、他の文献で研究してみることにします。
法学入門
1 購入動機
以下の記事を読んで、本書が勧められていたため。
2 感想
面白かったです。
第1講で、法は規範・主体・手続から成るとしていますが、本書は全体を通して規範と主体に焦点を当てていたように思います。
第2講~第4講で日本法制史の概要を解説し、日本における明治期・敗戦後の西洋法の受継が政治的側面からなされたものであると分析します。
そのうえで、第5講では、法の担い手の側面から分析し、日本では西洋でいうプロフェッション的な考え方が根付かなかったと分析しています。
この点、筆者は、日本では、政治的側面から西洋法が享受されたため、法律を所与のものとして受け入れるということばかり強調され、法律や裁判所を絶えず改善していくというプロフェッションの一側面が弱いということを強調しているように思います。
さらに、第6講では、法の担い手を要請するプロセスについて検討し、各国の法学教育の状況について概説します。
第7講以下は、法学や法律がどのような分野に仕訳されるかを丁寧に解説し、全体像を提供するものとなっていました。ここは、ある程度法律を勉強した人なら当たり前のことが書いてあるので、ざっと読み飛ばしました。
感想めいたものを述べるとすれば、以下の通りです。
・プロフェッション的な在り方は、自分ももう少し模索してみたいと思いました。
・個人的な勉強として、基礎法学をやってみるのも悪くはないかもしれません。
・40年前と現在は全く異なる状況にあると思いますが、本書で述べられるほど、日本法学が世界の中で占める割合はさほど大きくなく、また西洋法を乗り越えたとも言えないように思いました。
・14Pの「法学履修に対する適応・不適応」は、不本意で進学したロースクールでも微妙な成績しか取れず、挫折しそうになっていた自分を支えてくれました。やはり凡人は、じっくりと時間をかけて勉強するということは大切なのでしょう。
弁護士はこう表現する 裁判官はここを見る 起案添削教室
1 購入動機
何か得るものがあるかと思って購入。
2 感想
私の年次が上がってきたこともあり、残念ながらあまり得るものはありませんでした。
実感としては弁護士1年目~3年目向けの書籍という印象でした。
書籍の内容については、実例を付して説明するなどして、読者に、より分かりやすく理解させようという配慮が行き届いており、その意味で「起案」のお手本のように感じました。
ただし、個人的な印象として、弁護士の起案のわかりにくさの根本は、起案の位置づけにあるのではないかと思います。
すなわち、弁護士を事業としてとらえた場合、ある程度、善解や釈明してくれる裁判手続にコストをかけたとしても、裁判官を助けるだけであり(裁判官が弁護士によりかかり始めることすらありうる)、主張書面(弁護士の作文)によって、結論自体が動くことは多くはないのですから、ほかの部分にコストをかけた方が効率的です。
そのため、起案に十分な時間をかけて100点を目指すよりも、ほどほどの時間内に70点を目指すということになるのではないでしょうか。
これに対し、裁判官は手続の円滑な進行(つまりは、自分の仕事のやりやすさ)に、弁護士の起案の良しあしが決定的に重要です。
このように起案の位置づけに相違があるから、裁判官が裁判官室で愚痴や文句を言つづけ、弁護士は我関せずという状態が続いているのではないでしょうか。
プロフェッションの在り方としてどうなのかという問題はありますが、たぶん、この問題は現在の裁判制度が続く限り、ずっと残り続けると思いますね。
日本一稼ぐ弁護士の仕事術
1 購入動機
自分が、筆者のように売上5億も上げることができないことは明らかなので、どうやって達成したのかを学ばせていただこうと思ったから。
2 感想
この本には、仕事を取る→ハードワークする→成果で信頼を得るということが書かれており、特にハードワーク部分に重点が置かれています。
しかしながら、私が興味があったのは仕事を取るという部分です。
そのような観点から見ると、彼の強みは、①フットワークの軽さ、②北浜と東日本大震災事業者再生支援機構での経験、③徹底した準備にあり、それゆえ、組織のトップに気に入られ、仕事をもらえるようになったのではないかと思いました。
毀誉褒貶相半ばする人物ですが、やはり勉強になるところはあるものです。
これを踏まえて考えると、今の自分には、ダメモトでいいから、いろいろなところに顔を出して、覚えてもらって、人脈を作るということが圧倒的に欠けているように思います。
コロナ時代にどのように対応するかはなかなか難しいところですし、どういうところに顔を出せばいいのかはよく考える必要がありそうですが、自分にできる無理のない範囲でやるしかありません。