物語シンガポールの歴史

 

物語 シンガポールの歴史 (中公新書)

物語 シンガポールの歴史 (中公新書)

 

 アジア圏のお仕事をするにあたり、シンガポールに留学するのってありなのかなと思い、まずは歴史から勉強することにしました。

 読んでみたら、想像以上に面白くて、一気読みでした。

 シンガポールの歴史を英国植民地時代、日本占領時代、マレーシア連邦時代、独立時代と大きく4つに分節し、それぞれに解説を加えています。

 特筆すべきなのは独立時代、それもリー・クアンユーの統治の解説でした。

 シンガポールという国家に、民族、産業、国防等にどのような問題があり、それに対してリー・クアンユーがどのような対応をとったのかを分かりやすく解説していて、引き込まれました。

 開発という価値を最優先し、そのために合理的に国家の教育・国防・社会保障を組み立てるという彼の統治手法は、そうでもしなければ、国家として生き残っていけないという追い込まれた状況から生み出されたものであるように思います。

 国民も、社会の発展や公共住宅の提供という果実を得られたからこそ、厳しく生活を制限されつつも、リー・クアンユーの統治を認めていたのであり、ある種の共犯関係にあったのでしょう。

 もっとも、豊かな時代に生まれ育った若い人々は、その統治を支持しない傾向にあるとのことでした。おそらく背に腹は代えられないという感覚がないからなのでしょうね。

 普段あまり読まない分野の本でしたが、たまにはこういうのもいいですね。